点にまつわる絵たち


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2016   F4  油彩


いつもと変わらぬ日常(青空)に救われるときもありますが、自分の心に向き合わぬまま繰り返す日常は、水面下で傷を深く侵食していました。






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2016  F6  油彩


私は鞄にハサミやカッターを常備するようになりました。腹は大きな石を抱えたよう重く、喉は焼けるような熱さと物が詰まったような苦しさがありました。






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2016  F4  油彩






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2016  F6  油彩






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2016  S3  油彩


心の傷ができる度にカサブタができ、どんどん重なって、もう最初の傷が見えなくなって…心のカサブタは肥大こそすれ、取れることはないのだと思っていました。




ですが、今(2020)はそう思っていません。心のカサブタは取れる日が必ず来ます。

心から信じて望むのであれば。

青空を素直な気持ちで眺める日がきっと来るでしょう。










『点』

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2016  S3  油彩



この絵は、20年前から頭の中にあったイメージを初めて外へ出した絵です。イメージとしては、真っ白なだだっ広い空間に、黒く小さな点がひとつあります。それはパソコンで打ったような機械的な点で、無機質な空間です。

私は11歳のときに誘拐されて、性的な暴行を受けました。そのことにより、警察や親や先生と接する中で、傷付くことが数多くありました。もともと私は自分の思っていることを伝えるのが苦手であったし(とくに小さい子ほど不安やこわい気持ちは表現しづらいと思う)、当時はインターネットもスクールカウンセラーもなかったので、吐き出す場がありませんでした。そんなときに、自然とこの絵のようなイメージが浮かび、この点を自分だと思い込めばいいんだ!と思いました。辛くてたまらなくなったときにこの点を思い浮かべると、何も感じなくなるような、感情が麻痺したような感覚になり、とりあえず狂うことなく生きることができました。今思えば離人症の一歩手前のような感覚かもしれません。生存本能がそうさせてくれたのでしょう。その頃、自分は何も感じないロボット人間だ、という詩を書いた覚えもあります。


それから、中学・高校は勉強や部活に忙しく、服飾関係の仕事に就きたいという夢があったので、次第に点の存在は忘れていきました。大人になってからも忙しくしているうちは点の存在を忘れていました。ですが、いろんなことで躓いたときに、奥底にいた点が再び現れました。20年経っても消えていないなんて、思ってもみないことでした。これは外へ出してあげなければならない気がしました。手放す、とか、昇華する、という行為だと思います。


一人で家で描くだけでよかったのですが、その頃の家は5畳のワンルーム賃貸だったので油絵を描くスペースがなく、絵画教室へ通い始めました。最初からこんな絵を皆の前で描いたら変に思われると思いましたが、そう言っていられないほどの描きたい衝動がありました。

幸い、先生も生徒さんも暖かい方ばかりで本当に恵まれました。おもしろいね、とかそれぞれ感想を言ってくださり、それは私の想いとは違っても、ちゃんと『絵』として見てもらえたことが嬉しく、他者に見てもらえたことで、さらに昇華されたように感じました。



しかしながら、もし何かで悩んでいる人がいたら、自分を点だと思い込む方法はおすすめしません。だって、あなたは小さな点なんかじゃないから。感情をもった人間だから。素直なそのままで生きることを願っています。



油絵を描いてます

 私は絵を描きたくて描いているだけで、とくに目的や目標はありません。なので自分で納得が出来るものが描ければ、それだけで満足しています。

 絵は誰がどんなふうに描いてもいいと思うし、見たいように感じればいいと思います。

なので、絵にタイトルも説明もとくに必要ないのではないか(あってもいいけど)、と思っていますが、あった方がより作者の意図することが理解出来たり、視野が拡がることがあると思います。

 私の絵も、見てくださる人がいるとしたら、それぞれの解釈をしてくださればいいなと思います。なので、今まで自分の絵を言葉で伝えようとすることがあまりなかったのですが、これから載せてみようと思う絵は、説明を入れて紹介させていただこうと思います。

ほぼ、誰にも読まれないブログではありますが、もしかしたら誰かの救いになることがあるかもしれない、あればいいな、という気持ちです。不快な気持ちにさせてしまったら、ごめんなさい。


「心配です」を考える

"心配"とは文字通り心を配ることであり、ある対象に向けられた気がかりな感情を表す言葉である。「心配です。」と対象に向かって発するとき、その響きは相手に対する思い遣りのように感じるが、ほんとうにそれだけだろうか。もちろんそのままの意味で使用し、そのままの意味で受け取ることがほとんどだと思うが、相手の状況やお互いの関係性によっては、少し注意が必要かもしれないと思う。



瀕死状態の人に向かって、「大丈夫?心配です。」と声をかける人はほぼいないだろう。大丈夫でないことが目に見えているから、そんな言葉をかけてもお互いになんの気休めにもならないことが解っているからだ。そんなときにはどうするだろうか。何も言わずにただ相手の側に居て、手を握ったり、背中をさすったり、微笑んだりするのではないだろうか。

大切な人を亡くし酷く塞ぎ込んでいる人に対して、時間も置かずに「大丈夫?心配です」という言葉だけを投げかける人はいるだろうか。そういう人がいるとしたら、それは口先だけの心配か(口先だけで有難いときもある)、相手の気持ちを想像してみない人か、相手からの「大丈夫。」という返事を心の奥で待っている人なのではないだろうか。

相手から「大丈夫。」という返事を得られたときに感じる安心は、ほんとうに相手が無事で良かったという安心感だろうか。

相手から「大丈夫。」という言葉を聞き出せたことにより、自分は相手に対して敢えて行動を起こさなくていい、自分の生活を変化させなくていい、という安堵感がそこに混じっているのではないだろうか。



「心配です」の中には「不安です」が含まれているから、心配される状況である側が「大丈夫」という安心を与えなければならなくなり、知らず知らずのうちに立場が逆転していることがある。(大丈夫でない、と言える人ならいいのだが)

だから、相手の状況や関係性にもよるが、安易に「心配」という言葉だけを投げるのは、ときに相手の重荷になってしまうことがあると思う。誰かを心配に思ったときには、まず自分でその気持ちを受け止めて、自分の不安を減らすためでなく、どうしたら相手が安心できるのかを考えると、言動が変わってくると思う。



肉体の傷はわかりやすいが、精神の傷はわかりにくい。うつ病の人に"頑張れ"と言ってはならないと言われているように、心が瀕死状態にある人には「心配だよ。」よりも「大丈夫、安心して。」と言い、できれば側に寄り添っているのがいいだろう。



ほんとうは、言葉のもつ意味そのままに発して、そのまま受け取ればいいはずなのに、発信者が自分の奥底の気持ちに気づいていなかったり、気づいていてもその感情を言葉で言い表せなかったり、思っていることを隠そうとして違う言葉が出てきたり、表情と言葉や行動と言葉がちぐはぐであったりすると、感情はうまく伝わらずに、言葉は宙に浮いたままになってしまうだろう。発信者が真っ直ぐであっても受信者が歪曲して解釈してしまうときも、言葉は宙に浮かび風に吹かれる砂のように消えてしまうだろう。



他人事のように書いているが、私がこんなふうに言葉の背後にあるものを考えてしまうのは、私の中に恐れがあり傷付くのが恐いからだろう。相手に間違った物言いをしてしまったら謝って訂正すればいいし、相手の伝えたいことがわからなければ、深く聞いてみればいいだけなのに、あれこれ考えたあげく何も言えなくなってしまったりするのである。

言葉足らずで説明下手と言われる私は、パーピープー(擬音語)と図や絵で表現した方がとても気楽なコミュニケーションに思えるがそうも言っていられないので、まずは私が私を信頼し、真っ直ぐに他者と向き合っていきたいと思う。






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月の裏側のような尊い嘘も必要か…







コートの衿のデザイン変更

  店頭で 気に入って試着もしたけれど、家でじっくり着てみるとなんだか着づらいお洋服や、ネットで購入し実際に着てみるとしっくりこないお洋服などは、そのまま着る出番がなくなってしまうことがあると思いますが、

そんなお洋服も、少しデザインを変えてみたりサイズ調整をすることで、着ることができるようになります。



これは祖母のコートなのですが


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衿を立てて着ると衿が高すぎて顔にかかってしまうし、衿を折ってみてもなんだか変なので着ないままになっていました。なので今回は衿を短くすることと、


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袖口のベルトもいらないとのことなので、外すことにしました。肩パットも外します。



衿の高さは、着心地の良いなるべく近いデザインの洋服を見本にしました。


見本

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ではお直し開始です。


見本をボディに着せて、ボディテープを衿の高さに合わせて貼ります。

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コートの衿の部分のボタンと前立てを外し、衿に入っていたダーツをほどきます。

コートを着せて、ボディテープに合わせて衿の高さを決め、印をつけます。

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机の上で印がきれいな線になるように整え、ぬいしろ1㎝をつけて余分な部分をカットします。

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左袖の裏地から開けて、
裏衿、表衿を中表にして縫い合わせます。

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縫ったところのぬいしろをアイロンで割り、

衿ぐりのぬいしろ同士を縫い合わせます。


前立てをかぶせるようにして縫い、ボタンをつけます。

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袖口のベルトとボタンも外し、ベルトのついていたところは縫い直します。


肩パットも外し、裏地と表地の袖山を中とじします。


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左袖の裏地を縫い直せば出来上がりです。


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だいぶすっきりとした印象になりました。



    before  →   after

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↑光の加減で色が違って見えますが、色は変えておりません。







コートの擦り切れお直し

今回のご依頼もO様、長年ご愛用のコートのお直しです。気がつけばこのブログで紹介しているのはO様のお洋服ばかりになってきました。私が日々直しているのはおもに紳士物のスーツですが、O様のお洋服は可愛らしくてリメイク要素も強かったりするので、つい楽しくて載せたくなってしまいます。


さて、今回のコート。前端の擦り切れと左袖の肘の内側部分の破れが目立ってきました。買い換えも検討されたそうですが、なかなか気に入るものが見つからないので、お直ししてまた着用することにしました。


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前端の擦り切れ

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左袖肘の内側の擦り切れ

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前端はミシンで細かくタタキ縫い、袖は前見返しの生地を取って、はぎ合わせることにしました。見返しを取った部分は見えないところなので、代わりに別生地を足します。


では直していきます〜



左前見返しを外します。

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左袖の傷部分を切り取ります。

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切り取った袖部分を広げるとこんな感じです。この部分を外した見返しを4等分にし、縫い合わせて作っていきます。

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型紙をつくり、

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裁断をして、

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縫い合わせました。

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コートの袖に縫い付けます。

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切り取った見返しの代わりとなる別生地はO様がいっしょに送ってくださったこの綿生地を使います。

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外した見返しで型をとり(上部は縫いしろ分多くとる)裏面に接着芯をはります(今回は厚さをみて二枚重ねではりました)。

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コートに縫い合わせました。

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仕上がった左袖です。

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前端の擦り切れはこんな感じでタタキ縫いしました。

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別生地のくまのプリント部分がハギレになったので、ハンカチ?ともスカーフ?フロシキ?とも呼べないような使い勝手が微妙なものを作ってしまいました(38×38cm)。

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Oさま、受け取ってくださり有り難うございます!



このコートはキルティングで大きな柄があり、はぎ目が目立ちにくいことから、大胆にはぎ合わせて直してみました。生地の素材や破れ具合い、どんな仕上がりを好むかによって、直し方法は変わってきます。





シャツ衿リメイク②

このスタンドカラーをどんな感じにするか…f:id:akaitaner:20190304130015j:plain


折り込んでみたりして、どのくらい衿ぐりを開けるかなど考えます。
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実際に着用して位置が決まったら、チャコで印をつけます。
衿も取りました。
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ブラウスの衿ぐりの縫い代を1㎝残してカットします。前立ても衿ぐりに合わせてカットしステッチをかけます。
衿ぐりの処理は元のスタンドカラーを利用するので、スタンドカラーの表衿と裏衿を外して2枚にし、端同士を縫い合わせて1枚の長い布にします。それを衿ぐりにぐるりと縫い合わせます。
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元のスタンドカラーの生地を縫い代1.5㎝残してカットし、裏衿の裏面に貼ってある芯地をはがします。
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衿ぐりの縫い合わせた方の縫い代を0.5~0.7㎝くらいにカットし、衿のカーブがきついところには切り込みを入れます。
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アイロンで割って、縫い代をくるむようにして0.7㎝幅くらいでステッチをかけます。
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そして手芸屋さんで購入したリボンをつけたら完成です。

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before
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after
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衿ぐりの形はVではなくUにして、リボンももう少し幅広で長いものの方がよかったなとかいろいろ思うところはありますが、衿のデザインを変えるとまったく別物の服になることを実感しました。